日本で最初にオートバイが誕生したのは1909年だそうです。
それがやがて世界一と言っても過言ではないオートバイ大国となり、数多くの名車・珍車を生み出してきました。
そんな名車や珍車の中でも原付一種、原付二種に絞って、個人的な思い出話なども含めて好き勝手語っていきたいと思います。
今回は2003年に登場した、チョイノリです。
スズキ チョイノリの話
まえがき
時は2000年代前半、バイクにとっても環境問題は他人事ではなく…大排気量車はもちろん、小排気量車…更にはスクーターまでもが4st化され始めた時代でした。
2ストと比較して重い、パワーが無い、複雑と…特に小排気量車ではデメリットの目立つ4スト。
利点は燃費が良い…ということくらい?
構造が複雑ということもあり、それはダイレクトにお値段に反映されるわけであります。
特に50ccのスクーターとなると、必要に迫られて乗る人を含め日常のアシとしての役割がメイン。
価格が上がってしまうことで売れ行きにも影響があると考えられていました。
そんな中で2002年にホンダが登場させたのがトゥデイ。
中国で生産する等々、徹底的なコストダウン策をしたことで10万円を切る9万4,800円という価格を実現した名車です。
10万円切り! トゥデイ
出典:BikeBros.
そんなトゥデイに対して…というわけではないですが、同じようにスズキが低価格を追求し出した答えがチョイノリでした。
名前の通りに「ちょい乗り」にのみフォーカスを当て、徹底的に余計な物を省いて誕生したのがこのチョイノリ。
お値段は驚異の5万9,800円!
しかもエンジン、車体共に生産組み立ては日本!
キャッチコピーは「走れ、国産。\59,800。」です。
走れ、国産。 チョイノリ
出典:BikeBros.
本題
さてそんなチョイノリですが、2003年2月に登場。
中国を中心とした廉価スクーターや、ホンダの本気であるトゥデイに対して更に安い5万9,800円で登場しました。
通勤・通学、更には日常のアシとして近距離の移動のみにターゲットを絞ったという…物凄い潔い設計思想により、国産ながらもこの価格を実現しております。
とは言ってもしっかりと根拠のある割り切りとなっており、市場調査により「原付ユーザーの平均的な一回の移動距離は2kmに満たない」というデータが発端。
その使い方に必要な物のみを積み重ねて作られた車両となっているため、「セルが無い」とか「メットインが無い」とか、「サイドスタンドすら無い」なんてい言い方は適切ではない…かも?
「2km以内の移動にそんなものはいらん!」と開発者が叫んだのか叫ばなかったのか…とにもかくにも素晴らしい割り切りとなっています。
そんなコンセプトのため、ある意味では贅沢にも専用設計の車体に専用設計のエンジンが与えられているのも特徴。
徹底的に部品を少なく、更にはボルト類の締め付け箇所を減らすことで製造コストを削減しています。
エンジンは専用設計…と言うものの、実態としては耕運機などに使われる汎用のエンジンがベースとなっておりオイルポンプすらなくはねかけ式…。
車体の方もリアサスペンションが無く、今では自転車と同じ…大昔はそんなバイクも多かったフレーム直付け…。
「これがサスペンションだ!」と言わんばかりの肉厚サドルが採用されています。
そうそう初期モデルはオドメーターすら無く…「オドって無くても良いんだ…」と思った記憶も。
市場調査通りだったのか…安さは正義だったのか、出だしは非常に調子が良く5万台を販売。
しかしながら徹底的なコストカットのしわ寄せか…カムシャフトがすぐにダメになってしまうという致命的欠陥も。
他にもコストカットが故の故障と思われるものが色々とありましたが、翌2004年に対策されそれ以降はそれほど大きなトラブルは聞かないような?
人気となったためか派生モデルも作られ、若い子向けの?カスタム仕様とも言えるチョイノリSSが登場。
ホンダのズーマーを思わせるようなカウルレス仕様の他、ハンドル形状もフラットバータイプに変更されています。
男性向けとして登場 チョイノリSS
出典:BikeBros.
他にもカゴ取り付けのためにウィンカー位置をハンドル部分に変更したチョイノリⅡも。
そしてカゴをデフォルトで搭載したチョイカゴなんてモデルもありましたね。
2005年には台湾でも生産・販売が行われたそうで、2006年には500台限定でキティちゃん仕様も販売されたそうです。
最終的にはその汎用エンジンがアダになったか…排ガス規制に対応出来ずに2007年8月末に姿を消しました。
一説によれば…対応は可能だったものの、メーカーとしてそこまでの価値を見出せずに生産終了となった…という話も。
まぁ排ガス規制対応にはかなりお金もかかるでしょうから、価格の高くなったチョイノリは売れるのか?というのもあったでしょう。
ちなみにチョイノリと切っても切れない関係にあるのが、ほぼ同時に発売された軽自動車のツイン。
こちらも2人乗りを筆頭に、超が付く程に割り切った設計により49万円という価格を実現。
チョイノリもツインも出る時代が早過ぎたと言うか…改めて現代に同様のコンセプトで販売されれば売れるのではないかとも思ったり。
あ、それが8代目となったHA36Sアルトか。
思い出話
割り切りの度合いが凄かったこともあり、一般的にはユーザーに受け入れられたとは言えない…かと。
しかしながらその割り切りによって熱烈なファンを生み出したとも言えるでしょうか?
個人的な思い出話としては、スズ菌感染者の友人がやはり心惹かれていたのが印象的。
学生でも購入しやすい価格も魅力の1つだったことは間違いないでしょう。
もちろん、彼は学校内でも当然のごとく変わり者扱いされていましたが…。
トゥデイの記事を書いた際にも書きましたが、周囲でトゥデイに乗っている人間は何人かいました。
1人を除いて「家にあったから」という理由でしたが…同じく「家にあったから」という理由でチョイノリに乗ってた奴はいなかった…。
この辺りが販売開始から1年間で10万台を超える超ヒットとなったトゥデイと、販売終了までの約5年で10万台を売ったチョイノリの違いか…。
ついでにもう1台、個人的なチョイノリの話をすると…以前住んでいたアパートの自転車置き場にいたのを覚えています。
そのアパートには数年住みましたが…たったの1度も動いているのを見たことが無い!
たまたま見たことがないわけではなく、どう考えても動いている気配が無い車両でしたね。
ホコリにまみれて…蜘蛛の巣が張って、静かに駐輪場で朽ちていく途中という状態。
自分がもう少し社交的な性格であれば、このチョイノリを譲って貰って復活させる…なんてこともできたかもしれません。
とは言え自分は「熱烈なチョイノリファン」とは言えないレベルなので、直すのに想像以上にお金がかかるとわかった段階で放置していた可能性も…。
これを書いている2023年は特定小型原付なるものが話題になっていますが、そんな今こそみんなチョイノリ乗れば良いのにな。